皇位継承の「男系維持」を唱える論者の中には、時折(又はしばしば)
突飛な発言をされるケースを見かける。
先頃、「傍系主義」を標榜しておられる方がいて、驚いた。にわかに真意を図りがたいものの、少なくとも、現在の皇室典範にも
採用されている「直系主義」へのアンチの表明だろう。
直系主義というのは、皇位継承の順序として、先ずは直系の皇族を優先する。
次にもし直系の該当者が不在なら、傍系から血縁の近さに従って継承者を
決めて行く。
そういうルールだ。先に指摘した「親から子(又は孫)へ直系によって受け継がれてこそ、
天皇という地位(皇位)と皇室の血統(皇統)の継承性・連続性を、
素直に実感しやすい、という心的事実」に照らして、極めて真っ当なルールだろう。ところが、傍系主義とはどういうことか。
もし直系主義の正反対なら、天皇に直系のお子様がおられても、血縁が“遠い”順番に
継承者を決めて行く、という考え方になる。
傍系「主義」という以上、額面通りに受け取れば、“より”傍系である皇族を
優先するのが、本来の立場でなければならないからだ。しかし、いくら何でも非常識・不合理過ぎる。
ならば、とにかく直系の皇族は後回しにして、傍系でも天皇との血縁の近い順に
継承者を決めるのか。
しかし、血縁の「近さ」を重んじるなら、どんなに近い傍系の皇族より、
直系の皇族が“もっと”近いに決まっている。だったら何故、直系をことさら後回しにする必要があるのか。
「傍系」主義というのは、考えれば考えるほど分からなくなる。
勿論、そんな「主義」が制度として採用されることは(国会に最低限の理性が
残っている限り)、100%あり得ない。それとも、直系主義について、直系に“しか”継承資格を認めないと早合点して、
傍系にも継承資格を認めるという意味で、傍系主義を唱えておられるのか。
それはいくら何でも、無知と誤解の程度が甚(はなは)だし過ぎるのでは
あるまいか。傍系継承は過去にも多くの実例があったし、それを排除する規範が
登場したこともない。
ただ、天皇との血縁が遠い場合、それだけ「継承」「連続」の実感が薄れがちで、
観念的・抽象的な受け止め方に傾くのは免れない。
特に現代のような時代において、それは一層、権威や求心力、統合性にも
関わって来かねない。だからこそ、これまで以上に、極力、直系継承を
大切にしなければならないという結論になる。【高森明勅公式サイト】
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